|
「ちょっとパンクラスの試合に疲れました」と青森で休場を宣言した山宮。
その間にもパンクラスを巡る風景は着実に変化し続けている。ルール変更、渡部謙吾のデビュー、道場間のトレード・・・たった2カ月休むだけで、色々な事件が起きる。そんな動きの速い世界の中で自分のペースを維持し続けるのはたやすいことではあるまい。気が付けば去年までネオブラッドファイターだった山宮も今や中堅どころにつけるランカーとなっている。今日の試合でもセミを務めることになった。もう彼のいるポジションは、デルーシア相手に”健闘”では許されない。同期生の長谷川はデルーシアの壁に三度挑んで、いずれも跳ね返されている。
両者共、右を前に出す構えで試合開始。デルーシアはいつものように遠間合いの右ハイキックから入るコンビネーションでコンタクトしていくが、山宮は距離を詰めてカウンターの掌底を連打していく。一気に距離はなくなり、抱き合うようにしながらなおも掌底を打ち合う両者。山宮のこうしたインファイトのボクシングスタイルに手を焼くデルーシア。みるみる右の目の回りが紅潮していく。的確に山宮のショートフックがヒットしているのだ。たまらずタックルを打って、グラウンドに引き込む。 この段階で、山宮はすでに試合の主導権を握ったと言っていいだろう。グラウンドでの打撃を良しとしないデルーシアが、自ら顔面掌底とボディー・ブローを打っていくのだ。山宮のスタンド打撃に遅れを取ったことがデルーシアの余裕を奪い去っていたに違いない。
グラウンドに勝機を見出したいデルーシアだが、山宮のガードは固い。ギロチン・チョークもアーム・ロックも取らせてもらえない。良いポジションまでは取れるものの、フィニッシュに持ち込めないのだ。山宮もグラウンドにはつきあわず、隙を見てさっさと立ってしまう。あくまでスタンド勝負だ。
右ハイから入るコンビネーションに付け込まれるのを恐れたデルーシアは、自分から仕掛けることが出来なくなる。山宮も自分からは仕掛けない。間合いを計ってじっと睨みあう両者。デルーシアは距離を取って、構えの左右を入れ替えてみたりする。
デルーシアは迷っていたのだろう。そして掌底からハイ・キックにいくコンビネーションで仕掛ける。山宮はまたも一気に中に入る。そこにカウンターの左フック一閃!デルーシアが前のめりに倒れる。デルーシア、痛恨の1ダウン。8カウント。足に多少来ていたようだが、試合は続行される。
もうスタンドには付き合いたくないデルーシア。ロープ際で引きたおして、グラウンドに。ポイントを取り返したいデルーシアは、なりふり構わずグラウンド掌底を連打していく。手刀も入れる。しかし、悲しいかな打ちなれないためか、ブローに力がない。
ペースを乱されたデルーシアは、またも自分の辞書にない動きを見せる。
かつて船木に足を折られ、近藤・柳澤にも足関節で敗れた過去を持つデルーシアは、以後足の取り合いを自分から仕掛けることがあまりない。そのデルーシアが、マウントから回転して自ら足を取りに行ったのである。このポジションチェンジ自体は時折見せるトリックではあるのだが、十字に行かずに手近のアキレスに飛び付いたあたりがやはり焦りを象徴していたように思える。完全にペースが乱れていたのはその表情からも見て取れる。
一方、山宮には既にワンポイント先取のアドバンテージがある。ここを守りきれば勝ち逃げできる。元々ディフェンシブな動きには定評が有る。結局先行逃げ切り型の選手なのだろう。がっちり守りに入った時の山宮は心理的にも強い感じがする。ラスト数分はデルーシアに攻めるだけ攻めさせてまんまと凌ぎきってしまった。
試合終了のゴングと同時に「やられたよ」といわんばかりにデルーシアは山宮の頭を撫でた。鈴木の敗戦に続いてデルーシアも敗戦。パンクラス第一世代の牙城が目に見えて崩壊していく。そして、試合はメインイベントに・・・。
|